お吟さんの手術が終わったのだろう。

静かに眼を覚ます。

辺りは暗闇に包まれており、自分の居場所がお吟さんの家ではない場所だという事が解った。

「ここは?」

小屋だろうか?

木造で8畳くらいだ。

窓が一箇所に、扉が一つ、平凡な造りといったところだろうか。

多分、前の場所ではテンプルナイツ達に見つかると踏んだのだろう。

俺は部屋の壁際にあるベッドらしき場所に寝そべっている。

ティアとチェリーは、傍で二人寄り添いながら眠っていた。

二人とも、変鎖を完全に済ませているようだ。

「お吟さん」

性格に難はあるけど、やる事はやってくれる人だ。

二人分だから、一人でやるには相当無茶をしたんじゃないだろうか。

感謝してもしきれない。

そして、腹部の痛みは軽減されているようだ。

しかし、目の色が生き返る事はないらしい。

「お吟さんは、どこだろうか」

またどこかに出て行ってしまったのだろうか。

お礼を言いたいのにな。

「少し歩いてみるか」

長く歩かない程度なら、問題はないだろう。

二人を起こさないように静かに歩き扉を開けると、辺りは森の中だった。

獣道はなく、森に囲まれた世界。

ただ、小さな家付近の木だけが伐採されているような感じである。

簡易に立てられたスーパーハウスみたいだ。

近所でよく聞く鳩の声や虫の声が聞こえてくる。

一人歩きは非常に危険なのだが、お吟さんに会いたいという一心だった。

木の間をしばらく歩くと、水の音が聞こえてくる。

更に少し歩いた先には、滝の麓のような水の溜まった場所が存在していた。

そこに、柔らかい背中を見せて座っている影。