「ちぇ、チェリー」

いきなり手を掴まれた事により警戒している。

「チェリーを、困らせるんじゃねえ」

「お前さん、何を言ってるんだ?自己紹介をしなくちゃ、親睦が深まらないだろう」

「ブヒブヒ!」

隣のティアも叫んでいるが、ティアの場合は私の名前も聞いてくださいようってな感じだろうか。

「お前、女か?」

「ブヒ」

「じゃあ、名前を、といっても解らんな。おい、お前さん、このお嬢さんの名前を教えるんだ」

「アホ、か、それよりも、傷をどうにか、してく、れ」

節操なしのせいで、俺は気絶しそうになる。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

視界のチェリーが分身し始めている。

「ぐ、くそ」

気絶しかけの瞳の中、チェリーの後ろにはお吟さんの姿があった。

「お吟、さん?」

「アチシのラブホテルが台無しアル」

「おう、吟か」

「全く、お前の仕業アルか」

腕を組みながら、気だるげな目を親父に向ける。

「こいつがあまりに役立たずなんでな。ちっとばかり焦げたくらいだから、問題ないだろ」

「まあ、いいアル。しかし、愚息はとてつもなく惰弱アルな。何を座り込んでるアルか?」

「お兄ちゃんは、チェリーを、救うために、怪我を負ったの」

自分の責任だと思い、泣き始めた。

「ブヒ、ブヒ」

ティアがチェリーの頬の涙を舐めている。

「さっき、少し衝撃を与えたら、古傷にダメージを与えたらしくてな。ヤブ医者のお前さんなら、何とか治せるだろ?」

「フッフッフ、アチシにかかれば、めくるめく世界にいけるアルよ」

ヤブ医者というワードの上にお吟さんの言葉を聞いて、段々心配になってきた。