「起きました?」

扉付近にいるのは村で生活している時には一度も見なかったスーツ姿のレインだ。

「お前、無事だったのか?」

「幽霊に見えます?」

レインの笑い顔を見ると、無性に腹が立ってくる。

自分が笑えない状況にいるせいなのだろうか。

それとも、レインが唯一、無傷であるからという自分勝手な考えがあるからだろうか。

「それにしても、あんな惨状の中で生き残るとは凄いですね。あなたの悪運には関心を抱きます」

更に、気味悪く笑う。

「今、何て、言った?」

あの惨状を知っているという事は近くにいたというのか?

それとも、何かを仕組んだ張本人だという事か?

「今からいう事はすべて事実です。何の伏線などもありません。よく聞いてください。きっかけはあなたです」

「はあ?」

「ええまあ、私が原因と言ってもいいんですけどね」

「俺が、きっかけで、お前が、犯人?」

意味が解らない。

「村の妖魔達とは短い付き合いだったんでしょう?死んでも悲しくないですよね?」

「お前、自分がやった事を、く!」

感情が表立ったせいで自分の腹部の傷が疼く。

「傷の手当ては済ませてますけど無茶は駄目ですよ。だって、貫通してますからね。ホント、風穴を開けても生きてるなんてしぶといですね」

「くう、てめえ」

背中から腹にかけて痛みが激しい。

「話が進まないんであなたの意見は聞きませんよ。なら、何故きっかけとなったか。それは、あなたが結界内に無理矢理入ってきたからです」

「無理、矢理?」

「あなた、空間移動してきましたよね?」

そう、俺は美咲と共に亜空間の割れ目からここに出てきた。

「本来なら、長老が認めた者しか入る事の出来なかった結界内にねじ込むように空間に穴を開けて入ってきた。それで、歪みが出来て結界に支障をきたしたんです」