「そうなんや!じゃあ、ウチは?」

「おや、摩耶さんには葉桜君というフィアンセがいるじゃないですか」

「そんな奴知らん!」

「おやおや、彼の甚振られたい心をくすぐる手段を知っているとは、進歩してますね」

「ウチだってゴロゴロして、パパの帰り待ってるだけちゃうんやからな!」

自信に満ち溢れている姿は、戦女神を想像してしまいます。

「まあ、ええや。ウチはパパと一緒に暮らせてるだけで幸せや」

摩耶さんは私の腕に組み付いてきました。

「そや、あのお姉ちゃんのお母さんは助かったん?」

「ええ、魅了するような宝石を流しながらも、事なきを得ましたね」

「そうなんや、パパ、ありがとう!」

「私だけの力ではないんですがね」

龍さんがいたからこそ、久遠さんの平穏を守れたというところでしょうか。

「今日はパパが約束守って帰ってきてくれた記念やから、パパの眼鏡が割れるようなおいしいもん用意するわ」

「おや、目玉がレンズから飛び出るのですか」

それは死地に向うほどの味という事ですかね。

期待とプレッシャーが程よくマッチングして、体に負担をかけますね。

「楽しみにしといてや!」

「ええ、一度、摩耶さんの料理で昇天してみたいと思っていたんですよ」

一日で一難去ってしまいましたが、そろそろ彼女が動き始める頃ではないですかね。

彼女がいつ来てもいいように、準備をしておきますか。

さあ、今日のところは摩耶さんのイリュージョンを心行くまで楽しむとしましょう。