「ぎゃ!」

前に進もうとした飛鳥さんは、スカートを持たれていたおかげで前のめりにこけてしまいます。

その際の特典といえば、スカートが脱げるくらいですか。

「スパッツを穿いてますから、下着は見えずに安心ですね」

「うう、って、わわわわわあああああああ!」

辺りの男性がスパッツ姿を見ていますね。

今日から有名人になれるなんて、嬉しい限りですね。

しかも、鼻血を垂らしながらなど、コメディアンそのものじゃないですか。

何にでも挑戦する姿勢は、是非とも見習いたいですよ。

「うう、うう」

スカートを穿き直した飛鳥さんは、涙目になりながら顔を鼻血のように赤くしています。

「お嬢様、鼻血が出てます」

葵さんがティッシュを手渡します。

「うう、うわあああああああ!」

飛鳥さんが葵さんから山賊のようにティッシュを奪い、飛鳥さんはどこかへと走って行ってしまいましたね。

「恩師・摩耶、お嬢様の身が気になりますので、今日はお暇させていただきます」

「しゃあないな。ちゃんとパパの事、言っといてや」

「ええ、お嬢様の精神に異常を来たさない程度に申し上げておきますよ。では、私はこれにて!お嬢様ー!今日の晩御飯はカレーライスですよー!」

葵さんは飛鳥さんを追っていきましたね。

「パパ、ほんま騒がしい奴らやな」

「賑やかで良いと思いますよ」

スラム時代の時のような賑やかさとは違い、安寧の騒ぎですね。

「パパって、飛鳥の事、好きなんか?」

「おや、どうしてですか?」

「だって、さっき、糸がどうのこうの言ってたし」

「飛鳥さんには連太郎さんという素晴らしいフィアンセがいますからね。そして、私は女性とお付き合いする身ではないですよ」

私にとって、性欲や恋愛感情といったものは二の次にあたりますね。