妖魔03(R)〜星霜〜

「私もいただきましょうか」

龍さんと自動的に間接キスを決めながら、胃に魔草青汁を入れていきます。

「ほう」

胃の中にさえ、甘さを伝えるような甘美なる飲み物ですね。

それでいて、体の中の魔力を満たすという効果もあります。

一流の料理人兼開発者だと言ってもいいでしょう。

「さすが、笹原冬狐さんですね。日々、切磋している腕に裏切りはないようです。これなら、売り上げも期待してもいいと思いますよ」

「商売に興味はないですよ」

久遠さんの頭を撫でながらも答えていただけるところに、笹原冬狐さんの律儀さを感じてならないですね。

「おや、残念ですね。魅力に包まれたあなたが売り子になれば、駅前が人で埋まってしまうんですがね」

隣では仕事を終えた龍さんが帰り支度を始めましたよ。

「さて、ワラワは住処へ帰らせてもらうとするのじゃ」

「おっと、少し気になった事があるんですがね」

「何じゃ?」

「この結界が消えた時、結界内の世界は通常の世界に影響があるのですかね?」

「ないぞえ。そして、結界内と通常の世界に時間の差もない」

「ほう」

「ただ、結界が消えた瞬間に、通常の世界が広がるだけじゃ。そこには人もおる故、今の久遠を見たら騒動になるがのう」

「ならば、私達は突然現れるわけですか」

「そういう事になるかのう。故に、結界が消える前に人のおらん場所に移動するしかないのじゃ」

「ほう、スペシャルイリュージョンですね」

摩耶さんの前で娯楽として見せてあげたいところですね。

「赤城先生、龍姫さん、ありがとうございます。私達はこれで」

少し収まっている久遠さんを連れて、笹原冬狐さんはどこかへと歩いていきました。

「では、ワラワも帰るのじゃ」

「ええ、機会があれば、摩耶さんと会食でも」

「摩耶という御仁が誰かはわからぬが、機会があればの」

龍さんが去った後に空間が元に戻りつつ、闘いの痕跡は消えて人の姿がフェードインしてきました。