妖魔03(R)〜星霜〜

「盛んですねえ」

足場が悪くなる事によって、更に難易度があがってますよ。

久遠さんは炎が通じないと悟ったのか、右爪を振り下ろしてきます。

私としては彼女の腕を受け止めたいのですが、腕力では明らかに勝ち目がないので、こちらの腕が吹っ飛んでしまいますね。

そう思うと、過去に久遠さんの腕をまともに防いでいた野川さんは異常なほどの腕力を持っていたといってもいいでしょう。

そして、私の得物はナイフに尽きます。

剣や斧も生み出せたりするんですが、生憎、性に合っているのはナイフなんですよね。

ナイフでは受け止めるには少し短かったりします。

だからこそ、腕の攻撃もバックステップで避けます。

避けるのと同時に振り下ろした手の甲に魔力発散ナイフを投げつけます。

手の甲の大きさからして、簡単に刺さります。

これで大妖魔の魔力回復のスピードが緩みましたよ。

魔力発散ナイフは魔力消費が相当な物なので二本目は作れないんですよね。

もう一度、魔力発散ナイフで斬る事が出来れば、更に追い詰める事は出来るんですがね。

ですが、近づいて手の甲から再び抜くのは至難の業なんですよ。

更に言えば、久遠さんの近くに行けば体を包む業火に焼かれかねないんですよ。

丸焼けで死地に向うのも悪くありませんが、いちご大福味は捨て切れませんね。

「ナイフで牽制しますか」

ナイフを投げつつも、横に回りこみます。

ナイフは簡単に腕で払いのけられ、無意味に終わります。

しかし、それは、一つの行動で時間を稼ぐためにあります。

横に回りこんだ私は、周りに何かがないかと探ります。

相手に相当な隙が出来ない限りは、超耐熱ロープを出しても邪魔になるだけですからね。

「おや、街中にはいい物がありますね」

目の端に写った物を眺めている暇もなく、ファイアボールが襲いかかってきます。

避けようとしましたが、隣から腕が迫ってきていますよ。

動く速さはそうでもなさそうですが、腕を振るう速さは並ではありません。

考えの中になかったわけではないのですが、炎を連発するのではと油断しましたね。

あっという間に脇から下を大きな手で握られてしまいました。