「しかし、能力は解っておって勝算はあるのかえ?」

「『殺す』ではなく『捕まえる』ですからね、無きにしも非ずといったところではないでしょうか」

「そなた、死ぬぞ?」

「おやおや、心配なさってくれるんですか」

「丞ちゃんの知り合いじゃからのう」

「おやおや、皆さんお優しい方ばかりで、胸が弾みますよ」

初めて学園に通う新一年生の気分になったようですね。

「ワラワも、そなたに加勢したいところじゃが」

「いえいえ、あなたは大きな枠で捕獲という名目を果たしてますからね」

目の前のお嬢さんは、結界を張る行為で力を使っているのでしょう。

おかしくなったという表現が正しければ、お嬢さんが説得すれば必ずしも成功するわけではありません。

他の力を使う上で結界が解かれるとあっては、久遠さんの姿が明るみに出ます。

お嬢さんの役目は彼女を護るの一言に尽きるでしょう。

ここの人たちをどう非難させたのは解りません。

もしかすると、結界内に特別な異空間を作ったのかもしれません。

だからこそ、同じ街並ではあっても、人がいないという可能性もあります。

妖魔の力がどこまで出来るかはわかりませんがね。

ただ、結界が完璧ではない以上、久遠さんが結界内から出ないという保証はどこにもありません。

まあ、よく働く日本人気質なお嬢さんだといってもいいですね。

そして、私の仕事は『完全なる形』で彼女を捕まえる事にありですよ。

「暴走した場合、捕まえるのは困難になるぞえ」

「私としては暴走してくれたほうが有難いんですよね」

「そなた、何を考えておる」

「殺すも捕まえるも、暴走すれば死地に近づきますからね」

過去に遭遇した時は、死地とは程遠い位置にいました。

しかし、今回は真正面から対峙出来ると言う、ビンゴのリーチ状態、福引の2等、蛇の脱皮した皮を見つけるなどの絶妙な喜び加減があります。

「久遠が暴走した状態で、そなたが死ねばワラワ一人では食い止められぬ」

「おやおや、謙遜する姿勢が大物感丸出しですね」

「話を聞かぬか!本当の事じゃ!」

「おやおや、久遠さんに敬意を払う姿勢も素晴らしい」