笹原久遠さんがどこにいるのか見当がつかないので街へ繰り出してみます。

すると、どうでしょう。

外気の様子が変わっていますね。

空気の質は冷気から暖気へと、変化しているようです。

近くにいるというところでしょうか。

街に在住している方達の姿は見当たりません。

立ち並ぶビルなどがひっそりと佇んでいますよ。

「過ごしやすい気候だというのに、もったいないですね」

秋の再来とでもいうのでしょうか。

異常事態によって、旬の食事も変わってくるかもしれませんね。

「もしや、久遠さんがいれば、旬の煮干が食べ放題になるのではないのでしょうか」

「そなた、一人で何を言うておる?」

背後には、摩耶さんよりも少し背丈の大きい彼女がいますね。

髪は背中部分まであり、服装は今時の女の子が着るような軽装ですね。

「おやおや、この街中では珍しい方ですね」

「ここは結界を張ったはずじゃが」

「おや、先ほど違和感を感じたので、少し隙間を空けて入らせてもらいましたよ」

街に来る前、見えない壁のような物を感じましたので、魔力発散ナイフで間を開けたんですよね。

そういえば、その時は周りにも人がいましたか。

「そなた、まさか、アカ・マナフという御仁かえ?」

「私の事をご存知頂いていたとは、あなたは途方もなく博識な方ですね」

小さきお嬢さんの知能指数を少しばかり侮っていましたね。

私とした事が、人を見た目で判断など言語道断ですよ。

「そなたがとてつもなく危険な男じゃと、丞ちゃんはいっておったがな」

「おや、彼はやはり良い人ですね」

「何じゃと?」

「私に対して評価を与えてくださるんですからね」

私の事を眼中にないというのなら話は別ですが、彼はしっかりと私の事を見ていてくれていたという事になりますよ。

「そなた、色々な意味で危ないのう」

「おや、色々と言う幅を広げるところが、評価の視野が広がったという事ですか」

彼女は目を細めていますが、目にゴミでも入ったんでしょうか。

眼球に傷がついてしまっては大変な事になりますよ。