妖魔03(R)〜星霜〜

私と摩耶さんはサバイバーを後にし、帰路についています。

当初の予定は散歩でしたので、ほどよく歩いて完遂したといってもいいでしょう。

「パパ」

「おや、まだ口寂しいのですか?」

残念ながら氷は持っていません。

ニコ〇ットさえあれば、摩耶さんのイライラも解消されるでしょうか。

「ううん、昔の事、思い出しててん」

「摩耶さんは黄昏てしまう程、大人になってしまいましたか」

精神面でいえば、私を凌駕している可能性がありますよ。

「ウチはまだ子供や、いくら背伸びしても、何も変わらんもん」

「そうですかね」

「パパ、何でウチみたいな厄介もん、拾ってくれたん?」

摩耶さんは、私の故郷であるスラム街で寒々しく汚れた姿で怯えていました。

何故、彼女がそこにいたのは存じ上げませんが、当時は餓死寸前でしたね。

「私はですね、死地に向う以外にお話が好きなんですよ」

「お話?」

「ええ、誰かとお話が出来る事こそ、第二の幸福といってもいいでしょう」

更に言えば、摩耶さんはオチのない話に付き合っていただけますからね。

「じゃあ、パパは、ウチに話し相手になって欲しいから、拾ってくれたん?」

「ええ、後は、昔の知り合いに似ていたからですかね」

「そう、なんや」

「その方も、マヤさんと仰ってましたね」

摩耶さんが立ち止まってしまいましたよ。

震えているところ、やはり、〇コレット中毒なんでしょうか。

「じゃあ、ウチは、その子の、変わりなん?」

「摩耶さんに代打を求めた記憶はないんですが、私としては摩耶さんの鼓膜に傷をつける返答がないとスパイスの効いた一日が送れないんですよね」

「でも、似てなかったら、どうなってたん?」

「スラム街にいたのにも関わらず摩耶さんには殺気がなかったんですよ。お話し相手に殺気があるのも面白いのですが、無い方が話のラリーが続けられますよ」

「じゃあ、似てなかってもウチを拾ってくれた?」

「ええ、そうなりますね。まあ、あなたに殺気があれば、死地のやり取りをしていたと思いますがね」