妖魔03(R)〜星霜〜

「パパ、残りの分、上げる」

お皿の上には、半分ぐらい残ったハンバーグだけがあります。

傍にあった野菜は全て食べてしまったようです。

摩耶さんは子供ながらに嫌いな物はないらしく、料理を作った人に対して偉大な貢献をしているといっていいでしょう。

「摩耶さんの事を雑食の王と呼びたくなりますよ」

「ウチ、王様は嫌やなあ。お姫様やったら喜んでなるで!」

口寂しいのでしょうか、コップの中の氷を噛み砕いています。

摩耶さんの前世はアクティブな猟犬だったのかもしれません。

「では、ありがたく、摩耶さんの唾液と共に食べさせていただきます」

「パパ、そんなん言ったら、恥ずかしいやんか」

ですが、人が食べた後には、唾液が混じっているのは事実です。

料理の新たなるスパイスになるはずですが、私はグルメではないので気にしません。

「これは、シェフにお礼を言わなければなりませんね」

血走るほどの旋律が口の中に弾け飛びます。

絶妙な辛味が、食指を動かしますね。

喫茶『サバイバー』の料理は味に進化をもたらしたようです。

「レジェンドハンバーグはめっちゃ美味しいねん!ウチもこんなん作ってみたいわ」

「レシピをいただければ、摩耶さんならば作れるはずですがね」

摩耶さんの料理の腕なら『料理の〇人』に出てもいいはずです。

「極秘だよ」

私が質問する前に、パズルをしながら答えていただけましたね。

「あなたの広い聴力に感服するばかりですよ。ですが、摩耶さんの夢なんで教えてもらえないですかね?」

「駄目駄目、外には漏らせない秘伝なんだよ」

「おや、夜のガードばかりでなく、昼のガードも固いですね」

彼女の昼のガードを打ち崩すには、粘り強さが必要のようですよ。

「パパ、ええわ。ウチ、教えてもらわんでも暴いたるねん!」

「摩耶さんの前のめりな姿勢を見ると、子犬と一緒に応援したくなりますよ」

そして、最後に肩を組み合えば、レジェンドを越える存在になれるますよ。

「ま、出来るのならやってみな」

その一言と同時に彼女は丁寧にパズルを仕上げました。