妖魔03(R)〜星霜〜

「竹取物語に出てくる綺麗な女性の事を言うんですがね、実は彼女を巡る阿鼻叫喚のお話なんですよ」

「そんなに怖い話なん?」

「ええ、彼女の出す条件によって、人が死んでますからね」

「ウチ、そんな話に出てくる女に、なりたない」

「素敵な方なんですがね」

「そんな女になったら、パパにもしょうもない我が侭言って嫌な事させるんや!」

おかわりで来たハンバーグに皿が割れるほどの勢いでフォークを刺しましたよ。

「摩耶さんの言葉を聞くと、いちいち阿波踊りをしたくなりますね」

「外道、恩師摩耶に悪い部分だけを伝えるのは止めなさい」

二杯目のレイコーを一気飲みした後で、葵さんが私達の傍に立っています。

「おや、私としては、いい部分も伝えたはずですがね」

「確かに、殿方の求婚を断り続ける行為は我が侭な部分がありましょう。ですが、彼女は月の者であって、地球人ではないんです。結婚してしまえば、理不尽な別れがある。そう、彼女は殿方の事も考えて断り続けたのです」

「彼女に対して執念のような思い入れがありますと、きっと月の世界に招待される事は間違いないですよ」

「外道、あなたは摩耶さんに夢を伝える義務があります。それを行わなかったあなたは地獄に招待されて万死すべきです」

「かぐや姫は結婚したくなかっただけでしょ。それより、恥ずかしい事言ってないで帰ろうよ」

葵さんの後ろではコーヒーを飲み終えた飛鳥さんが、服の裾を引っ張っているようです。

「そんな飛鳥さんを応援したくなりますよ」

「外道からの応援など、犬にでもくれてやる!」

「犬に応援というジャンルは感動を招きますね。今度、一緒に犬を応援しましょう」

最後に肩を抱き合うと、より一層達成感を味わえますね。

「その応援で、犬を狂犬病にさせるつもりですか!」

「もう葵さん!いいから帰るよ!」

「ああ、お嬢様!」

飛鳥さんの豪腕によって、葵さんは店から退場してしまったようです。