私としては、おいしいご飯が食べられればいいと思うんですよ。

突然始まった過去話に割り込んだりしてすいませんね。

ですが、聞いてください。

ご飯という物は、人にとって必要不可欠だと思います。

過去話よりも必要不可欠なご飯の話をしたほうが盛り上がるとは思いませんか?

そう、目の前でハンバーグを食べてる摩耶さんの笑顔が素敵なんですよ。

これがご飯の力かと思うと、私はご飯を尊敬してもいいんじゃないかと思います。

だからこそ、ご飯の話を断行します。

「パパ、一人で何言ってるん?」

「いやね、摩耶さんを笑顔にさせるハンバーグには何の材料が入っているのか気になったんです」

「牛肉ちゃうんかな?」

「牛肉だけで、摩耶さんを笑顔にさせるとは思えませんね。他にも隠したスパイスが入っていると思いますよ」

笑顔スパイスの秘密を知っているシェフを呼びたいところです。

しかし、喫茶店にシェフがいるものでしょうか。

「あんたさ、ハンバーグ驕ったら、手伝ってくれるって本当なの?」

「ええ、嘘はつきませんよ」

目の前の野川さんは、今だに日本にいるようです

残念な事に乾さんの説得に失敗してしまったようですね。

乾さんの頑迷さは世界の中で五本の指に入るといってもいいでしょう。

「私としては愛人の野川さんには、日本で新たな相手を見つけたほうが幸せだと思いますがね」

傷が治ったので摩耶さんと散歩をしているところに、野川さんと出会ったわけです。

野川さんの地中に張り巡らされた根っこのような根強さで諦めていないようですね。

「別にいいじゃない。私は行きたいのよ」

「おや、彼を思う気持ちはハンバーグのおいしさよりも勝っていますね」

「ハンバーグと比べられても素直に喜べないわよ。それより、手段があるわけ?」

「島へ物資を運ぶ飛行機からダイビングするのがいいんじゃないですかね?」

「本気で言ってるの?」

「葉桜君の下に行く途中で爽快感が得られますよ」

酸素の薄い世界に飛び込めば、修行にもなりそうですね。