「ブヒ!」

豚の声が聞こえてくると、続いて格闘している音が聞こえる。

物の擦れる音や、樹の折れる音。

しばらくすると、聞こえなくなった。

そして、歩く音が静かに響いてくる。

「ブヒ」

視界の中に、ブタの顔が見える。

「何で、豚が」

見たところ暴走しているとは思えない。

暴走しているのなら、すぐに俺を襲ってもいいからだ。

豚は俺とチェリーを背に乗せると走り出した。

豚が目的地へ向うために通り過ぎようとしたところで、ウッドの無残な姿を見た。

ウッドの顔にあたる樹の部分が折れており、蔓も引き千切られているようだった。

ここまで強い豚とは、何者なのか。

しかし、思考が続かず、段々と瞼が落ち始める。

「チェリー」

俺はどうなるのだろうか。

解らない。

でも、わかった事が一つだけある。

俺は普通以下の何も出来ない腐ったミカンだったって事だ。

自分を卑下しても何も生み出さないし、愚かだと思う。

でも、事実を述べただけに過ぎない。

きっと俺は何かを守る事なんか出来やしない。

幾度も自分を貶めながら、意識が途絶えた。