「ティアは、気に入った奴とか村にいないのか?」

「ティアを政略結婚の道具に扱うつもりですかあ?ほんと、丞さんって自分の利益しか考えない亡者ですねえ」

「お前は政略という言葉に縁がないと思うんだが」

「でもでもー、容姿も性格もイケてる人なら、ティア自身を上げてもいいと思うんですよう」

「80過ぎの老人に奉仕しろ!」

殴ろうとしたが同じ事の繰り返しだと思い、寸止めする。

ティアも受身を取る準備をして止まっているようだ。

「誰かと付き合うっていう意志はあるんだろ?」

俺は拳を下に向けて、冷静さを保つ。

「あるに決まってるじゃないですかあ。あ、丞さんは、ティアの事が気になるんですかあ?」

「気になるっちゃ気になるが、恋をしてるからではないぞ」

「きゃあ、丞さんって大胆ですねえ。ティアに全裸になれなんて」

「お前の頭蓋骨を剥ぎ取って、別の脳みそを埋め変えたいんだがな」

「でもでもー、村にはいませんよう。だってー、ティアの理想はー」

「解った解った」

いきなり話を戻されて戸惑ったが、大体の事はわかった。

村に居ないというのなら、何をしてもしょうがない。

誰かがアプローチをかければ、少しはティアの気持ちも変わるかもしれないのだが、ティアにゾッコンラブな野郎は居ないだろうな。

村にはもっと魅力的な女の妖魔がいるんだしな。

「おっと、もう時間みたいだな」

朝の農作業が始まる時間が来ている。

何故解るのかといえば、体内時計だ。

後は、窓から外を覗くと村の妖魔が外に出始めているっていう理由もある。

「んじゃ、今日も行くかあ」

今日は、少し肌寒いのでお吟さんから貰ったコートを着る事にした。

どうせ後で脱ぐんだろうけど、寒い思いをするのは嫌なので着ておきたかった。

「それじゃ、ティアもちゃんと仕事しろよ」

「大丈夫ですよう、丞さんみたいに脳内人妻に埋め尽くされてませんからあ」

「言ってくれるじゃねえか。それじゃあな」

家から出たのだが、今日は村の様子がおかしかった。