妖魔03(R)〜星霜〜

俺が動けないのはカメリアの能力か。

目を合わせただけで動けなくするとは、強力すぎる。

「ふふ」

長い髪が垂れ下がり、その中には魅惑的な瞳が二つ浮かんでいる。

「カメリア、お前」

「夫の事は愛してる。けど、それだけじゃ駄目なんさ」

俺の唇とカメリアの唇が重なり合う。

「お兄さんは身を任せるだけでいいよ」

「馬鹿、野郎が」

「おや、抵抗するほど嫌なのかい?」

「こんなこと、しなくても、俺は逃げない」

「お兄さんは、チェリーや夫に対して引け目は感じなくていい」

「お前だけが、責任を背負うなんて、俺は、認めない」

「へえ」

「例え、今が、苦しくても、辛くても、自分自身の事なら我慢する。それに、我慢を、カメリアに強要はしない。だけど、今、お前一人だけが、苦しい思いを、感じるっていうのなら、それだけは我慢ならないんだ」

俺自身、我慢は弱いほうだと思う。

だけど、カメリアを一人で哀しませたくないせいか、自分の立場、状況、感情を殺せそうな気がした。

巻き添えを食らった者達には、恨まれる事になりそうだけどな。

「私は子供じゃないんだよ」

「今、お前は、独りじゃない。目の前にもう一人居るって事を解ってくれ。誰だって、痛みは軽くしたいだろ?頼りないかもしれないけど、一人で背負うよりは、二人で背負った方が、楽じゃないか」

「お兄さん」

「俺は人形じゃない。だから、一人で慰めるようなやり方は、止めろ」

「全く、どこまでもおかしな人だよ」

身体が全て動くようになった。

「私に襲われたという事にしておけば、彼女を裏切った事にはならなかったかもしれないし、チェリーや夫に対しても負い目を感じることはないんだよ?」

「こうなったら、騎虎の勢さ」

今更、自分の言った事を取り消そうなどとは思わない。