妖魔03(R)〜星霜〜

しばらく、お互いの手を握っていた。

それが恋人同士の愛のある行動ではない事は確かだ。

ただ、別の愛があり、癒しがある。

俺にとっては、痛いほどに十分だった。

「カメリアの旦那さんは、どんな人だった?」

「ちゃんと家族のために働く、真面目な人だったよ」

「いい人だったんだな」

「そうさね」

カメリアはコップの中の酒を見つめていた。

「でも、何でそんな人が家をずっと開ける事になったんだ?」

「大事な用があったんさ」

「家族を置いて、か?」

「そうさ」

本人は自分の事に気付いているんだろうか。

俺から見れば、寂しげな顔をしているように見えた。

「いいのか?」

「彼が何をやりたかったか解らないんじゃ、良いも悪いも判断しようがない」

「違う、カメリア自身の気持ちはどうなんだって事だよ?」

「さて、どうだろうねえ」

「誤魔化さないでくれよ」

「そう見えるかい?」

「俺に、あれだけはっきりとした助言を出した人が、自分の事を解らないなんてあるかよ」

「はは、他人のほうがよく見えるのかねえ」

コップを置いて、カメリアのエメラルドグリーンの瞳が俺の瞳を射る。

「お兄さんは、嘘つきな女は嫌いかい?」

身体が硬直したように動かない。

「何を?」

「信用してくれなくても、恨んでくれてもいいよ」

俺はカメリアに押し倒されるままに床に横になった。

この時、カメリアが何をしようとしているのか、男ならば解らないはずがなかった。