妖魔03(R)〜星霜〜

カメリアが俺を脇に抱えると、枝と枝を器用に飛んで行き来する。

最終的には、5メートル程度から飛び降りて無事着地。

「よっと」

カメリアは俺を脇から下ろして服装を正した。

「ふう、こんなに身体を動かしたのは久々だねえ」

「良い運動になったんじゃないか」

「おや、それは私が太ってるって事かい?」

「なんちゅう被害妄想を」

「冗談冗談、それより」

笑っていた顔を引き締める。

「お兄さんの不幸がどれほどのモノか解らないけど、私に出来る事があるなら遠慮なくいいなよ」

「カメリア」

「お兄さんはいつも強張った顔をしてるからね、少しでも緩まるんなら手伝うよ」

「ありがとう。俺も、カメリアが困ってる事があるなら何だってやるよ」

「おや、じゃあ、夜の手伝いでもしてもらおうかな」

「本気か?」

「冗談冗談」

一瞬、本気のように思って、胸の鼓動が高まってしてしまった。

「お兄さんは意識しなくても、ちゃんと出来る事をやっているよ」

「そうだと、いいな」

カメリアは両手で俺の右手を包み込む。

「お兄さんはさ、少しでも良い思い出作って、村に居て良かったと思って欲しい」

「それは、カメリアのお願いか?」

「そうさね。でも、ティアの世話と農作業ばかりだから難しいかな?」

「そうでもないよ。近くに村一番の美人がいるなら、十分って程の思い出になる」

「おやおや、抑えるところは抑えるんさね」

「まあな。それに、カメリアの手の温かさも、良い思い出だ」

まだ生きているという感触を伝えてくれる。

同時に、カメリアの優しさが痛く感じられた。

俺は優しさを施して貰えるような奴ではない。

それは、口に出さない。

口に出した瞬間、彼女は余計な事を考えてしまうからだ。