妖魔03(R)〜星霜〜

ウッドは目を瞑って集中する。

服が上に引っ張られるように浮き出し、枝から手足を離したウッドも浮遊する。

何ら問題はなく、徐々に徐々にと降りていく。

例えるならば。向きは逆だがシ〇タが降りていくアレだ。

「よし、そのまま持続させろよ」

ウッド自身に対しては力が使えないだろうから、こうするしかなかった。

使えるのなら、さっさと降りられたはずだしな。

しかし、今のウッドは、恐怖心が増幅しているだろう。

死にたくないという気持ちが、自分を突き動かしているはずだ。

落ち着けと言ったところで、立ち直るまで時間がかかるし、枝が折れれば元も子もない。

しばらくすれば、ウッドは地上に降りられるだろう。

「さてと」

俺はどうするか。

すでに、結構な体力を使っているだけあって、今から降りるとなると途中で腕の力がなくなってしまいそうだ。

「今度は俺が降りられなくなるとはな」

ミイラ取りがミイラになるという諺を使う羽目になるとは、何て愚かな。

「体力が回復するのを待つか」

枝の根元を股に挟んで座る。

昼からの農作業には参加出来ないだろう。

一日延期になるかもしれない。

俺も寿命がかかっているが、ウッドが落ちて死ぬ事となれば後味が悪く村を出る事になる。

「いいさ」

自分の手を見ると色が白い。

日々、自分の死が近づいている証拠だ。

「考えても仕方ないな。日本の事でも思い出そう」

千鶴に子鉄ちゃんに久遠などの女の子達を思い浮かべる。

皆、変わっているのだろうか。

「まだ、一年も経ってないもんな」

千鶴が金髪になっていたら、俺は目が飛び出るかもしれない。

誰かに染められてたらどうする?

それも、あまり考えたくないな。