妖魔03(R)〜星霜〜

カリン〇ウに登るゴ〇ウを思い出す。

あれはもっと高いし、途中に枝もなかった。

あんな危険な事をよくやるぜと思ってしまう。

今は何とか途中の太い枝に辿り着き、一休みしているところだ。

「嫌になるな」

上を見上げるたびに、苦痛としか思えなくなってくる。

汗をぬぐって、全身に気合を入れなおす。

「はあ、綺麗な実ってのは、魅力的なのかねえ」

休憩を終了させると、再び幹を伝って登っていく。

終始無言。

必死なので、時間の感覚などわからない。

しばらくして、頂点の近くだと解る場所まで到達する。

「はあ、はあ」

枝は少し細いが、幹の近くならば大人の体重は耐え切られそうだ。

「ウッドは」

枝の先のほうで枝に沿うように、全身で掴まっているようだ。

枝の状態は、軋んでいるようにも見える。

やはり、思ったような事態になっていた。

「おい」

しかし、ウッドは怯えた目を見せるだけで、何も語ろうとはしない。

高所恐怖症に近いのなら、登るなといいたいところだ。

それだけ、必死だったのかもしれない。

「ふう、俺も人の事は言えないが」

下を見た瞬間に意識が飛んでいってしまいそうだ。

「お前に言いたい事は後に回す。今は俺の事が気に入らないだとか思って言う事を無視するんじゃないぞ」

ここで反発されると登ってきた意味がなくなる。

「お前、物を浮遊をさせる事が出来るんだろ?」

俺に対して石を飛ばしてきたところ、出来ないことはないはずだ。

「落ち着くのは助かってからでも良い。今は魔力を使って自分の服を浮遊させて、ゆっくり降下させていけ」

着用している物に対して能力を使えば、衣服が破れない限りは降りられるはずだ。