俺は一同が集まる会場に到着する。

会場といっても何もない広場なのだが、そこに10から20くらいの妖魔達が座ったり立っていたりする。

大人の姿も混じっているが、子供が大半だろう。

長老命令だけあって、無視するわけにはいかなかったのか。

チェリーやモンドだけかと思いきや、他の子供もいる事を初めて知った。

チェリーは笑顔で俺の方を向いているが、モンドの仏頂面は変わらない。

他の子供達は個々に話をしていて、あまり興味がなさそうだ。

しかし、俺が大勢の前で話すことになるとはな。

「えーっと、皆、用事があったと思うんだけど、集まってもらった事には感謝する」

静かに始めると、親が子供を静かにさせて、静寂の世界が広がる。

「俺は旅人の葉桜丞って言うんだ。多分、火野長老から話がいってると思う」

少し緊張するものの、話を続けるしかない。

「今日から二週間、俺が住んでいた故郷の日本って場所の話をする事になったんだが、正直、大した事は話せないと思う。だけど、知ってる事は真面目に話すから聞いて欲しい」

問題はここからである。

昨日はご飯の事を話したので、今日は現在販売されている電化製品の話をしよう。

俺は、テレビや扇風機や洗濯機や掃除機や他の物の良い所、悪い所を説明し、丁寧に話し続ける。

村人は興味が沸いたらしく、聞き入っているようだった。

「今では携帯を皆持っているわけだ」

「はいはい」

一人の子供が手を上げる。

「何だ?」

「物が見たい!」

「残念ながらないんだよな」

「えー!ないのか!嘘くせー!」

確かに、俺も本物がなければ疑ってしまうところだ。

「人間は妖魔のような能力を持っちゃいないんだよ。妖魔が頭を働かせていないわけじゃないが、人間は脳を働かせる事に特化しているんだ。だから、次々に色々な物を生み出してきた。もし、人間と妖魔達のレベルが同じだったとすれば、妖魔が人間を恐れる理由なんかないわけだろ?だって、人間には持っていない物を持っているんだからな」