学校側の意見は、だいたいふたつに分かれている。

ひとつは、推薦をもらうべき。これには、すでに荒川を受け入れる準備を整えつつある大学側への配慮もあれば、その大学との今後の関係性の悪化を懸念する気持ちもある。

もうひとつは、蹴るべき。荒川個人の意思を尊重しようとする気持ちが大部分に、推薦ではなく実際にいくつか受験させることで、高校の合格実績を伸ばしたいという願望が、少し。

僕自身は、まだ自分の立場を決めかねていた。

「ま、難しい問題だよなぁ」

ふぅ、と小さく息を吐くと、麻生の呆れたような声が返ってきた。

「なんですか、その頼りない返事は」

「だってしかたないだろ、わかんないし」

「生徒を最善に導くのが先生の役目でしょ」

「いやー……」

僕は頭皮を掻きながら、小さくかぶりをふった。

「何が最善かなんて、誰にもわかんないよ」