「似てる?」
「麻生は、……」
その続きを紡ぐことが、僕には躊躇われた。
由紀に、似ている。
黙って窓の外を眺める静かな表情も。
気に入らないときに相手を怯ませる睨み方も。
時々、本当に時々、うっすら口元に浮かべる薄い微笑みも。
僕は思う。
もし、僕が由紀の本当の弟だったのなら。
もっと由紀の心の近くに、いられたのだろうか。
「その、腕にしてるやつさ」
僕が麻生の腕のブレスレットを指差すと、麻生は腕を軽く持ち上げた。
「これ、ですか?」
「うん」
見間違えるはずもない。
小さな貝殻がひとつ付いただけの、銀のチェーンのシンプルなブレスレット。
「僕が由紀にあげたものに、似てる」
そう言うと、麻生は腕元をじっと見つめた。
「これ、由紀姉からの最後の手紙に入ってたらしいんです」
「……最後の?」
「はい。読んだことは、ないけど」
由紀は最後に、何を残したのだろう。

