だから、君に


「……でも、二人は姉弟だから、結ばれないことに由紀姉は悩んで」

「だから海に身を投げた。そう言いたいの?」

遮るように言葉を被せると、麻生は戸惑った表情を浮かべたまま、小さく頷いた。

「違うよ。麻生は、昼ドラの見すぎ」

わっという歓声がグラウンドから聞こえる。

潮の匂いがまざった風が、カーテンをふわりと揺らした。

「じゃあ、どうして、」

麻生は視線をゆっくり逸らした。

「どうして、由紀姉は死んだの?」

彼女の頬を、一筋の涙が伝った。

それを拭う術を、僕は知らない。