だから、君に

麻生が問題を解く横で、僕は以前集めた、生徒の進路希望調査書をじっくり見ていた。

この高校では、ほとんどの生徒が進学を希望している。
僕のクラスも例外ではなく、彼らの希望と適性・能力を、あらかじめある程度は考慮しなければいけない。

よっぽど無理な希望でなければ、まだまだ伸びる夏の時点で変えさせることはないし、それは僕の方針とは違った。

ぱらぱらと模試の結果と照らし合わせ、僕は小さくため息をついた。

「先生、生物室にはエアコンつかないんでしょうか」

いつの間にか手を止めていた麻生が、肘をついて僕の顔を眺めていた。

ふてぶてしいとも取れる態度は、いつもけだるげだった由紀によく似ている。

「理科棟にはお金まわされないよ。校舎見ればわかるでしょ」

「えぇー。暑い、暑いです」