由紀が十歳のとき、麻生は産まれた。 そしてその後すぐ、由紀と麻生の両親は離婚。まだ幼かった麻生は母親に引き取られた。 「原因は何だったのか、知らないんです」 「離婚の?」 「はい。円満な離婚だったらしいですよ。円満なら離婚するなよ、と思いますけど」 まだ乳飲み子の妹を心配したのか、由紀は度々母と妹宛に手紙を書いた。 小さかった麻生は、「離れてくらす姉がいる」という事実だけはなんとなく理解していたそうだ。