だから、君に

生物室に沈黙が流れる。

僕らはお互いに目を離さないまま、どちらが先に口を開くか、微妙な間合いを図っていた。

開けっ放しの窓から、海のにおいが少し漂う。

「……どうしてそう思うの?」

先に視線を外したのは、麻生だった。

「……由紀姉とは、別々に暮らすようになってからも連絡を取り合ってました」

彼女はぽつぽつと、過去について語り始めた。