だから、君に

先生と話がしたい、なんて頼られているか好かれているかしないと出てこない発言に聞こえるけれど、目の前の麻生は仁王立ちで、小さな体からただならぬ迫力を出している。

「何だよ、進路相談?」

僕は首筋をかきながら麻生に尋ねた。

本来なら「何でも聞くぞ!」という態度が教師にふさわしいのだけれど、麻生は並々ならぬ「関わると面倒くさい」オーラに溢れている。

「ここじゃまずいから、生物室に移動しましょう」

そう言うと麻生はさっさと歩き出した。なんだか昨日とまるで同じだ。

背中を見送っていると、職員室の入口で麻生が振り返り、立ち上がろうとしない僕を鋭い目つきで睨みつける。

睨み方まで由紀そっくりとは、泣けてくる。

僕は渋々立ち上がった。職員室を出るときすれ違った前田先生が、僕らを不審そうに見ていた。