だから、君に

「先生、日誌です」

「あぁ、ありがとう。荒川は?」

「帰りましたけど」

日誌を受け取るとき、麻生の細い手首が袖口から覗く。
右の手首に、銀色のブレスレット。

「荒川、日直の仕事ほとんどやってないだろ」

似たものを、以前見たことがある。

「荒川くん野球部で忙しいですから。それに号令はやってくれたし、黒板消しは根岸くんが手伝ってくれました」

それより、と麻生が腕を組む。

「今日は部活いらっしゃるんですか?」

「え?あぁ……別に顧問いらないだろ、生物部」

「まぁ、いらないですけど」

「はっきり言うなよ」

「でも私、先生と話がしたいから」