「じゃ、何て呼べばいいんだよ」

いささか腹が立った僕は、同じくらいぶっきらぼうに言った。

「由紀でいいよ」

「呼び捨て?」

「うん」

「それはできないよ」

僕がそう言うと、由紀は勉強机から顔を上げて僕を軽くにらんだ。

「なんで」

「だってさ、あなたは僕より年上だし」

お姉ちゃん呼びを気持ち悪いと言われてしまったので、慎重に二人称を選ぶ。

「年上って、二つしか違わないけど」

「それでもあなたが人生の先輩であることには変わりないわけです、よ」