「たとえば、家族、友達、先輩、後輩、先生」

「恋人とか」

「そうっす。あとは、嫌いな奴、ただの知り合いなんてのも」

「うん」

ぶるり、と身体が震える。根岸はマフラーを巻き直した。

「俺にとって、美紀は『恋人』です。少なくとも今は、ですけど」

「まあ、そうだなあ」

「あとはまあ、そういう方法じゃなくて、単純に好きか嫌いか、で分類することもできると思うんですけど。……でも」

中指で鼻をこすり、ゆっくりと言葉を選んでいる横顔は、真剣そのものだった。

「そういう分類に、どうやっても当てはまらないひと、っていうのが、誰にでも一人はいるんじゃないかな、って」