「麻生は、お前と付き合ってるんじゃないの」

「あぁ……そうか、先生知ってるんでしたよね」

卑屈に歪んでいた彼の表情が、不意に緩む。

「美紀とは三年の四月からだから、もう……八ヶ月になります」

「麻生は知ってるのか?さっきの女性のこと」

僕の言葉に、首を左右に軽く振った。

「言えないです」

「でも、根岸自身はあの人のことが好きなんだろ」

「うーん」

他の人を想いながら、麻生と付き合っているというのか。
僕のなかに、沸々とした気持ちが沸き上がる。

憤りよりも軽く、疑問よりも重い、苦々しい気持ち。