後から知ったことだが、由紀のその認識は、以前の『家族』には受け入れられないことだったらしい。
芹澤さんがなぜ離婚したのか詳しいことは知らなかったけれど、もしかしたらそのことも関係していたのかもしれない。
「このことは、今の日本で決してメジャーなことだとは言えない。好奇の目で見られることだってあるだろう」
コウキの目、という言葉に不安を感じ、僕はまた芹澤さんに視線を戻した。
芹澤さんの大きな瞳が、僕をじっと見据えていた。彼はいつだって、僕を一人前の人間として接してくれていた。
「でも、僕らは家族だから。由紀のこれからの人生を、一緒に歩んでいく家族だから。由紀の幸せにも苦しみにも、この子が選んだ道にも、応援して支えていきたいと思っている」
「……うん」
今思えば、「支えなければいけない」ではなく、「支えていきたい」という彼の言葉に、僕は言いようのない嬉しさを感じていたのだろう。
ずっと母と暮らしてきたことに、不満を感じたことはない。
でもあのとき、僕はようやく、これで僕も『家族』を持てたのだと思った。
僕らはきっと良い家族になれる。そう思った。

