だから、君に



由紀の話を、しようと思う。

由紀が……『彼女』が男性だと知ったのは、僕が中学に上がる直前のことだった。

「大志くんにもきちんと話さなければいけない」

リビングのテーブルで、僕の向かいに芹澤さんと由紀がいた。
母は温かい紅茶をカップに注ぎ、四つをそれぞれの前に並べた後、僕の隣に座った。

春の日差しが部屋中に注ぎこんでいて、ぽかぽかした空気とは対照的に、僕以外の三人の顔は険しくて、僕の緊張を煽った。

「由紀はね、身体と心の性別が違うんだ」

性別が違う。僕はその意味がよくわからず、僕をじっと見つめる芹澤さんの視線から逃れるように、少しうつむいた。

ひとつひとつの言葉をかみしめるように、静かに芹澤さんは続けた。

「身体は男の子と一緒なんだ。でも心ではそれを受け入れられない状態、と言ったらいいのかな」

体は僕と一緒。目の前に座った由紀の顔をそっと見上げる。
膝のあたりをじっと見つめる由紀の頬に、睫毛の影が落ちていた。

「自分で認識している性別と、身体の性別が異なっている。わかるかな」

わかったようなわからないような気持ちで、でも僕はそうしなければならないと思い、小さくうなずいた。