黒板をきれいにし終え、実験室らしく机に備えつけられた水道で手を洗う。

勢いよく流れる水の音以外には何も聞こえない、静かな昼休みだった。

麻生も黙々と箸を進める。僕は何かを口にしかけて、言葉が追い付かずにまた口を閉じる。

キュ、と蛇口を捻るのを待っていたかのように、麻生の小さな声が耳に届いた。

「祖父が来るそうです」

壁にかけておいたタオルで手を拭きながら、僕は何気ないように答えた。

「そう」

初めて出会う、由紀の祖父。

彼の目に映る僕がどういった姿なのか、わからないようで、既に知っているような気もした。