「もうすぐ私の面接が始まるわけですが」
荒川の三者面談の翌日、昼休みに生物室で授業の片付けをしている僕を、麻生は弁当をつつきながら眺めて、そう言った。
黒板を消す僕と少し離れた机に陣地をとり、渋味のある赤い弁当から厚焼き玉子を取り出す。
秋の生物室からは、大きな樹木に黄色がかった葉がずらりとしがみつく様子が見えた。
「準備はいかほどですか、芹澤先生」
「準備も何も、麻生は優秀だから特に言うことはないよ」
「まぁ、そうでしょうね」
「謙遜って日本語知ってる?」
呆れて振り返る僕と目を合わせず、麻生は黒豆を口に頬張る。

