荒川の父親と荒川本人と向かい合う。
横に並べた二つの机をはさんでもなお感じる、大きな威圧感がそこにはあった。

「ええ、で、それではー……三者面談を始めたいと思います」

むすっとした顔の父親が、眉間に皺を寄せたままギロリと僕に目を向ける。

殺される、と思いきや、彼はゆっくり頭を下げた。それが挨拶だと気がつくまでに少し時間がかかり、僕も慌てて頭を下げる。
荒川も口を真一文字に結んだまま、首を少し曲げてみせた。

「本日はわざわざお越しくださり、ありがとうございました。いや、もうすっかり秋めいて」

「先生」

僕の季節の挨拶は、荒川父のやたら低い声に遮られた。

「あ、はい」

「こいつの進路についてですが」

「はい」

「明青大学に進学させるつもりです」

断固とした彼の声が、教室に重く沈んでいった。