ギシリギシリと軋み始めた身体を伸そうと、男はカメラを手に持って車から出た。

その時。

『ドン!!グチャッ』


舞い降りた『もの』は人だった。

二つの音がしたのは、身体が弾んだ為。

男は反射的にカメラを構えた。
何度も何度も何度もシャッターを切り。
何枚も何枚も何枚もフィルムに焼き付けた。

撮っているうちに、それが若い女性で、裸だと分かった。頭は赤黒く光り、四肢がそれぞれ異なる向きになっていた。

身体は、鮮血が飛び散った事で、新月の様な透き通る位の白さを強調し。大きさも形も良い、張りのありそうな乳房と、艶めかしいくも『ツン』と尖った乳首が見えた。

フラッシュがその妖艶とも言える美し肢体を浮立たせた。男は魅了された。

快楽に似た感覚を得て。夢中でカメラを向け撮り続けた。


その瞬間!!
バタバタビチャビチャ!

その『もの』が動いた!。

四肢をバタバタと動かし、まるで身体から逃げ出そうとするかの様だった。


バタバタと別々な動きをしていた四肢は始まりと同じく唐突に動きを止めた。

男はシャッターを切る事も忘れ、ファインダーの光景に魅入っていた。むしろ自らがブルブルと振えている事にも気付いていなかった。



後に分かったのだが。女は政治家の愛人で、別れ話の口論の最中、興奮して部屋から飛び降りたとの経緯と。
神経と筋肉の反射作用により、稀に短時間だけ四肢が動く事もあるという事だった。


男はその悦に似た、得も言われない体験が忘れられず。また毎晩の悪夢にうなされる事から逃げ出す為に、自らを危険に晒すような現場に行き、写真を撮り始めたのだった。