修司は黙り込む。


「修司くん?どうしたん?」


慎二は心配そうに、修司の顔を覗きこむ。


「おれにかまうな!このあばずれめ!!」


その瞬間、クラス全員が固まった。
皆は意味は分からなかったらしく、ただ修司が大声を出した事にびっくりしていた。


「修司くん?
何言ってるの!」


担任の先生が修司の口を塞ぐ。


「どこでそんな言葉を覚えたの!」


「おやじがいつも言ってるよ。
おんなのひとにむかって。」


修司は何も悪びれた様子もなく、
そう言った。


そのまま、
慎二とは友達になれないでいた。


その日の夜、
達弘は学校からの電話に顔を赤くしていた。



「ったく、余計な事言いやがって。」


達弘は修司の髪の毛をワシャワシャとかき、
眉間にしわをよせた。


「そんなん言ってると、よそに売り飛ばしちゃうぞ!」


「え……っ」


「俺には借金がたくさんあるから、お前を売って、返そうかな?」


達弘は冗談のつもりだった。


だが、
達弘のせいでなってしまった“被害妄想”が、発動してしまっていたのだ。



次の日から、
修司は荒れた。


見かねた淳平が、
達弘の借金を返済してくれた。


修司は、この事件を期に、
もっと被害妄想が激しくなった。