「助からなかったって……ごめん…ごめんな…」
おにいさんは借金の取立て屋だった。
修司のお母さんとは昔からの知り合いで、仲間にもおおめに見てもらうように言っていたらしい。
それでも借金は無くならず、
増える一方だった。
いつものように催促しに行ったところ、
家はすでに炎に包まれていたらしい。
修司は状況が理解できず、
ただおにいさんが泣いているのを見ていた。
「…修司くん?」
病室のドアが開き、
また別のお兄さんがやってきた。
「こんにちは。おじちゃんは武田淳平って言います。修司くんのお母さんの弟だよ」
武田淳平と名乗る人は、
20代前半くらいで、背がスラッと高い。
「今日からキミのパパになるから、よろしくね。」
そう言って淳平は笑った。
「…だめ。」
修司は母の言葉を思い出した。
「ぼくのあたらしいおとうさんは、このおにいちゃんだから」
二人はびっくりしていたが、
お母さんの残した手紙を二人に見せる。
手紙の内容は、修司の本当の父親が達弘だと書かれていた。
「…まじで?」
淳平は達弘の方を見た。
達弘も、身に覚えがあるため、否定できずにいた。
その当時、達弘は16歳だった。
「達弘くん、修司くんは任したよ」
淳平は、達弘の肩をポン、と叩き、
病室を出た。
達弘は、修司が自分の子供だった事を
今日初めて知った。