乱樹(らんじゅ)の香り




はじめて見る、落ち込んだ慧。

何で、すぐに後を追いかけなかったんだろう。

と、廊下の端で、すぐに慧の姿を見つけた。

はじめてみる、見栄えのよい男の子と、楽しそうに話している姿。

何だか麗は脱力した。

「麗?」

兵庫の声がした。

振り返る。

「慧に用?声、かけないの?」

「かけない」

即答して、兵庫の腕を捕まえた。

「兵庫くん、彼女、いる?」

兵庫は、ちょっと驚いて、それから、静かに、麗を見た。

「いない」

「・・・じゃあ・・・」