―――掴み合っていたのは多分、ものの数秒にもならなかっただろう。
真っ白になっていた頭は、この男に対しての怒りばかりで埋め尽くされた。
『やめてよ、二人とも!!
ここ、病院だよ?!』
割って入ったルミは、俺達を引き離した。
『…アンタ、外で話せる?』
スーツの襟を正した男は、舌打ちをして俺を睨んだ。
そして、答えを聞く前に背を向けて歩き出した。
真っ白な病院に溶け込みそうな服の色に、綺麗にセットされた髪の毛。
後ろ姿さえもオーラを持ち合わせている気がして、それがいけ好かなかった。
心配そうに見つめるルミも、不安そうに見守る病人達も、受付の女も。
全てにイラついて、仕方がなかった。
何で俺が、アイツの男に殴られて、その上話までしなきゃいけないのかがわからない。
それに俺はまだ、アイツの顔さえ見ていない。
殴られた頬は痛いし、打ち付けた背中も痛い。
この男の後ろを歩いているだけで、俺が負けている気分だった。
いや、勝負にすらなっていなかったのかもしれない。
だって俺は、選ばれなかったんだから。
『…“何で殴られたかわかんない”って顔してんな、アンタ。』
「アァ?!」
煙草を咥えた男は、月を見上げて煙を吐き出した。
小馬鹿にされているような気さえして、男を睨みつける。
『…千里を傷つけんなよ。』
「―――ッ!」
そして、顔を近づけてきた男は、俺に向かって煙を吐き出した。
真っ白になっていた頭は、この男に対しての怒りばかりで埋め尽くされた。
『やめてよ、二人とも!!
ここ、病院だよ?!』
割って入ったルミは、俺達を引き離した。
『…アンタ、外で話せる?』
スーツの襟を正した男は、舌打ちをして俺を睨んだ。
そして、答えを聞く前に背を向けて歩き出した。
真っ白な病院に溶け込みそうな服の色に、綺麗にセットされた髪の毛。
後ろ姿さえもオーラを持ち合わせている気がして、それがいけ好かなかった。
心配そうに見つめるルミも、不安そうに見守る病人達も、受付の女も。
全てにイラついて、仕方がなかった。
何で俺が、アイツの男に殴られて、その上話までしなきゃいけないのかがわからない。
それに俺はまだ、アイツの顔さえ見ていない。
殴られた頬は痛いし、打ち付けた背中も痛い。
この男の後ろを歩いているだけで、俺が負けている気分だった。
いや、勝負にすらなっていなかったのかもしれない。
だって俺は、選ばれなかったんだから。
『…“何で殴られたかわかんない”って顔してんな、アンタ。』
「アァ?!」
煙草を咥えた男は、月を見上げて煙を吐き出した。
小馬鹿にされているような気さえして、男を睨みつける。
『…千里を傷つけんなよ。』
「―――ッ!」
そして、顔を近づけてきた男は、俺に向かって煙を吐き出した。