20代半ばくらいに見える彼女の弟だから……在校生ってことはないか。

いや、年の離れた弟ってことも……なんて、勝手に想像してみる。



「……あ、ごめんなさい、ヘンな話して。ありがとうございました」

「あ、いえ、こちらこそ、すみませんでした」



ペコリと頭を下げると、彼女も同じように頭を下げてワゴンを押して行った。




どれくらい時間が経ったのかわからず、勉強室に戻って時計を見ると、もう5時になろうとしていた。

課題をやっている時間はなさそうだ。

広げたままの教科書やらノートやらを仕舞い、勉強室を出た。



図書館から出る手前に、貸出カウンターがある。


なんとなく視線を向けると、そこにはさっきの彼女が座っていた。

やっぱり目立つこの制服のせいか、彼女も俺に気づいたようだった。


さっき顔を合わせたばかりだし、素通りするのもちょっと違うと思い、俺は通りすがりに軽く会釈をした。

彼女も小さく微笑んで会釈をしてくれた──……。