「こないだの女、彼女じゃないんだろ? どうせお前のことだから、頼まれて断り切れなかったとか、そんなんだろ?」

『……うるせーよ』


否定しないってことは、やっぱりそうか。


アイツもなかなかお人よしだからなぁ。


「思いはちゃんと伝えないと、すれ違うだけだぞ」


そう。

どんなに強く思ってたって、それだけじゃダメなんだ。

それを伝えなきゃいけない時がある。

この人なら言わなくてもわかってくれるなんて、そんなの驕りだ。

強い思いこそ、譲れない思いこそ、言葉にして伝えないと。


「告って押し倒せばいーじゃん。千鶴んちなら誰か帰って来るなんて心配、ないんだし」


思わず唇が上がる。


俺きっと、すっげー意地悪い顔してるかも。


『はっ? バカなこと言ってんじゃねーよ……』


電話の向こうで火を噴いてそうな智明が想像できる。