ふわり




と、
王はライアのもとに降り立つ。
夜色をしたマントのような肩から生える羽。
人型の長身痩躯。

彼の腿根程までしかない小さなライアの頭に慎重にその鋭い爪のついた手の平を乗せる。



「あの男が…気にいったか?」
「え?」



ゆっくりと、静かに。
肯定される事を怖れながらした質問に、当の少女はきょとんとした顔をする。

質問の意図を捉え切れずにいる顔だ。




「…わからぬなら、良い。もう戻れ」



ライアは一つ頷くとぱたぱたと駆け出す。
それを見送る王を振り返り一度、笑った。


「おやすみっグラジオラスっ」


彼女にこの呼び名を付けられてから、何年がたったのだろう?
彼女の目が覚めた花畑に咲いていた花の名前。

王は僅かに破顔し、その小さなシルエットを見送る。




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