しばらくの沈黙の後、王はぽつりと苦笑するように呟いた。




「もし余が彼奴を喰ろうたら、ライアは泣くのだろうな」


―リンを想って、―


月光と同じ色で輝く髪の奥、同じく月光色の双眸が細く月を見上げた。




「無論、泣くでしょうな。
…『羽憑き』の青年、リン・リカルドと、貴方様の事を想って」


ぱっとメイスフォールを振り返った王の姿は、凄艶、月の申し子を思わせる程に美しい。


不安定なその瞳は、母にすがる幼子のようだ、とメイスフォールは思う。





「ライアは、貴方様を見捨てたりなど致しませぬ」




言って含めるように、優しく。












温度を感じさせない月が、ただぽっかりと夜空に浮かんでいた。