腹の辺りをさらわれる衝撃に意識がしっかりしてくる。



「あーゆーのはさっさと逃げるが吉なのさ。ぐずぐずしてんじゃないよ!」

「「リンらしくない!」」

「大丈夫か!?」

「「怪我はないか!?」」



赤猿達は口々にリンに問い掛ける。
嫌な汗が一気に吹き出した。


「………行かないと」

「えぇ?」




うわごとのように繰り返すリンの様子に、一行を乗せて駆けるクロスメイアスが静かに口を挟む。




「花君なのだな?」


「あの化け物はライアなのか!?」

「「「「まさか!!」」」」


「…」





静かに頷いたリンに猿達は沈黙する。
アキが自分のトサカのような金毛をガシガシと掻きむしる。




「なんてこったい…畜生」


「…助けに、行かなきゃ」

「やめときな、無駄死にするだけさ」

「それでも」




段々と、リンの言葉がしっかりとしたものに変わって行く。

いつの間にか、いつものリンの顔に戻っている。



「それでも…ライアをあのままにしたら森はなくなる」



アナイトセタにとっても、
クロスメイアスにとっても、
そして、リンやライアにとっても大切なこの森を、



ライア自らの力で壊してしまうのだ。






「ライアは、少なくとも一度、こうして大切なものをなくしてるんだ」


何故か、あのライアの笑顔に白い歌い手の微笑んだ顔が重なった。