ゴオォ…












「……火の手が、上がってきたな…」


洞窟の中から外を伺い、リンは苦しげに呟いた。
チェオにはどうやら統制剤が打たれていたらしい。

そしてその爪に仕込まれた毒で、リンも常人程度の力しか出なくなっていた。


リンは肩で息をしながら洞窟の奥を振り返った。



「ライア…」




先程からうずくまったまま動かない。
必死に何かに耐えているように自身を強く抱いたままうわごとのように何か呟いているのだ。




「記憶が戻ろうとしているのかもしれんな」

「!?」




振り返ると、影のような黒衣を纏った銀髪の吸血鬼が入って来るところだった。




「記憶が戻り始めた事で娘の中で止まっていた時間が動き時間を戻そうとしてるんだろう」

「あなたは…」
「一つ言っておく」



リンの言葉を遮って吸血鬼は続けた。



「この小娘が記憶を失っているにはそれなりの理由があろう。
貴様にその小娘の過去まで受け入れる気があるなら…」


ズシャッ
ブシャアァ……


三人の存在を発見した羽付きは、姿を表した瞬間に吸血鬼によってその首から血潮を吹いて絶命した。

一拍前と変わらぬ表情で振り返る。



「その後は、覚悟を決めろ」

「…?」





そしてすぐ後に現れた黒羽の羽付きの身体を貫いた。