死人の類いと疑うも、その声も目の見えない表情も晴れ晴れと気持ちが良く、未練があるようには見えない。



「どうしたんだ?」と聞くと、女は静かに笑って返し、そこで夢は途切れた。












…………





自分の中で『自分』が濃くなっていく。
薬の効力が切れたようだ。
遠くにあったように感じていた冷たい牢獄の石の感触が急に近く感じられる。


それと同時にずっと麻痺していた疲労感が俺の体を石畳にめり込ませようとするかのようにのしかかってきた。


(疲れた……)


いつも駆り出された後はしばらく動けず疲労感に身を任せる。
倒れ込むようにその場に寝転がると、廊下を挟んで反対の牢から間延びした声が放られてきた。


「おーつかーれさ〜ま〜」

「…起きてたのか、オウル」

顔の半分くらいの大きさはありそうな眼鏡を付けたガリガリに痩せた少年がキロキロ笑う。


「ビーックニュースビーックニュースゥ〜」

「…リンの事で何かわかったのか?」

「ビップ関連だけど〜ビップの事じゃーあな〜いよ〜」







異人類種ナンバー10、オウルの種族『兎鬼螺(トキラ)』は力は弱いがその秀でた探査能力を特徴とする。


長い耳、常人よりも大きい頭とギョロリと出た目。


オウルの種族は自ら進んで城に来る奴が多い。