しばしの沈黙の後、王グラジオラスは悔しげに目を閉じる。

「すまないバイアス。
私が不甲斐ないばかりに君にこのような役回りを…」

何度たしなめても繰り返す謝罪に、バイアスはその紅眼を細めて苦笑した。


「何度言ったらわかるんだ?親友。
悪役には慣れているさ。
君だけがわかってくれていれば良い」

そしてグラジオラスの親友である吸血鬼は森の闇に消えた。



「メイスフォール」
「此処に」
「今夜例の羽付きを此処へ呼べ」

「仰せのままに」

それを聞くと王は静かに空を見上げた。














森の高い木々の上に広がる空が、少しずつ白み始めていた。